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by LADY LILY

隠れんぼを数人でする。わたしはわたしを遠くから見ているのだが、一向に誰にも見つからない。泣きそうになるのを堪えて、こっそり帰ろうかというところで、Jが見つけ出してくれた。彼が恋人なのだろうと泣きじゃくりながら思った。

Rの家に泊まり、彼は舞台の本番なので寝ているわたしをその儘にしてくれて出て行った。頭上から濡れたものが顔に当たり、目を覚ますと、吹き抜けからいくつも洗濯物が干されている。上の階の住人がせわしく洗濯をしているようだ。彼はいつも大変だなあと思うと、10歳にも満たない少年が器用に、アスレチックのように遊びながらベッドへと降りてくる。Iちゃんは?ーと彼の苗字で聞く、彼は仕事に行ったわよ、と答える。いつもこうやって彼と遊んでいるらしい。彼は自分をTちゃんと呼び、Iちゃんの恋人?と聞いてきた。わたしはそうよ、と嘘をついた。Tちゃんの母親らしきひとが家事を続けている。姿は見えない。少年が消え、起床。デスクの横の小さなドアが壊れて、椅子が下へと落ちている。4階と認識している部屋から、あらゆるものが落ちてしまっているので、途方に暮れる。コンクリートの階段から、女性が数人現れ苦情を伝えられるが、うちひとりはKで、久し振りの再開を喜ばれる。ごめんなさいね、彼が帰ってくる前に片さないと、と話題を切るように掃除をはじめる。運び終えると出窓で彼女が待っていた。腕を回されてキスをする。腹が減ったので阿佐ヶ谷の駅の方へと、暑いのでピンク色のスリップ一枚で向かう。駅のロータリーを入る前にあるオープンカフェが賑わっており、ビーフシチューが目に付く。1000円をこえる値段なので悩んでいると、女子大生風の店員がお客さまなら、内緒でお安くいたしますとかわいく言うので喜んで入る。とても素晴らしい味だが、ひとりで食事をしているのはわたしだけで左奥にTちゃんの家族が団欒と食事にきていた。ご家族に挨拶すると、Rの知り合いだという、なんとか舞踊団のダンサーも相席している。あれのね、ふうん、と見下したようにわたしを見るのでわたしも眉を顰めながらもう会うことはないわ!と心の中で叫んでやった。Rに会うと言うので、一緒に部屋で待つことになるがー彼は何度か遊びにきているらしいー終始わたしは不機嫌に珈琲を淹れ、会話もなく煙草だけ減らしていくのであった。そこにRが帰宅、マチネが終わったから、と息をきらしながら一瞬帰ってくる。犬のように喜び、彼の分の珈琲も淹れぴったりと横に座る。そしてこの名前も知らない男と楽しそうに話すので、またわたしの尻尾は垂れ下がってはやくソワレが始まればいいのに、と舌打ちをした。ところで、ふと目が覚める。ベッド。今度は頭上には何もなく、いたっていつも通りの風景。横にいる眠そうな彼を起こし、いまね、とても変な夢をみたのよ、と最初からの話を聞かせた。今日は声が大きいね、と嫌がられたところで今度こそ目が覚めた。

実家が4軒ほど存在していた。同じ構造でそれはできており、すべて同じところから入るので4軒というよりは4種類あったのかもしれない。胸部に何度と無く違和感があり、なにやらわたしは常に祖父のようで祖父ではない誰かに取り憑かれていて、会話をしながらその家を巡る。外で祭りがやっているようだ。快楽的に何千人ものひとが大きな音で踊りはしゃいでいるが、それはちらりと目にしただけで家の奥へと奥へと向かうことだけを気にしている。老父が、4つめの家に進む度にそちらへは行ってはいけないと戒める。なにやら幽霊がいるから、だと幽霊に教えられている。
二部、長い食卓台。隅にRと座り食事をする。色取り取りの、グラデーションブルーとシルバーで構成されたシチリア産でブルゴーニュ風の河豚から取れたムール貝を、貝を摘まんで身を取り出すーこれはわたしがパリで教わったムール貝の食べ方だが、これを得意気にRに教え、困ったように彼は食べ出すのであった。

子供を身籠ったが、まだ学生のようだ。相手はわからない、もしくはまるで気にしていないようで大学構内にあるアトリエにとにかく無数の布団やシーツをKと集めては、置いていく。SやOも途中協力をしてくれる。産卵のための巣作りのように、淡々とー恐らく記憶の中にある、シーツの数々、ハローキティの毛布ーこれはわたしが小学生の時に使いっていたものかー手当たり次第に探していく。大学は母校の名称であるが、敷地の構造は小学校に近い。左手の広場にて筋肉質の黒人男性らが球技をおこなっている。その内のひとりがフランシスベーコンだか、バンクシーだか、ベクシンスキーだかで、今日の特別講義に出席できないことを悔やむ。正面玄関を上がると、改築する以前の実家の部屋などが現れる。緑色の、手術台のような照明の隣、二段ベッドから引き剥がす。アトリエは草の多い茂った階段を上がると、おおよそ30cmほどの手すりのない廊下を渡る。手前の部屋を開けると、3畳ほどの部屋に浮浪者が寝ている。スキンヘッドのそれと目が合い、慌てて扉を閉める。二つめの部屋がアトリエ、広く、日差しのいい三角の屋根。既に敷いた窓際の布団に足を骨折したOが寝ている。押し入れにも二組布団を敷いていたが、足りない!と叫んだ。

理由はわからないがひどく怒った様子で、苛々と煙草を吸っている。いつだか見たことのある表情。何本も白い陶器の上に積み重なり、吸い殻が吸い殻を押し潰し焦げた匂いと共に灰になっていく。向かい、わたしは吸う事を許されず黙ってその黒い塊をじっとみている。相手がなにかを喋るが、口元が動いただけである。媚びるようにまばたきを二度ほどしっかりとした。わたしは知っていたような気がする。場面転換。省略。きりきりと身体が痛い。首に彼の爪、通常より長く猫のそれのよう。右半分に直線。血は流れず、青黒く割れ目が出来上がりそこから規則正しい呼吸の音が掠れて聞こえる。丁度魚の鰓のように、開いては閉じて、閉じては開いて、雨のように罵声が浴びせられる。暗転。恐らくそれのたったの2分後に蛍光灯のようないやな白のレストランで、安いスープをすすりながらわたしはその殺されかけた彼に助けて欲しいとお願いをした。

目映いほどに天気のいい日、左側に入り口のある家に辿り着く。Mの家だそうで、久し振りの挨拶をすると、緑に覆い茂られた3mほどのアーチのある庭が目につく。そう遠くいる訳ではないのに、とても遠いところのように雌鹿がこちらをみている。写真を撮ろうとカメラを向けると、途端に雌鹿は奥へと逃げ出すが、彼女が動くと同時に犬や、虎だがライオンまでが無邪気にあそびだす。丁度ワルツを踊るような、シャガールの天井絵のような、入り乱れてはすぐに消えてしまった。Mはさもいつもの風景であるがごとくそれらの名前や生態をわたしに話す。Mに連れられレンズはまわした儘アーチへと向かうと森のような背景だったものは歪み、港町が見えて来た。オレンジ色の廃れた板ー若干斜めと作られているがーの上に立つと家々が山のように海沿いに建てられている。海。足下に波が打つ。飲み込まれる。暗転して、別の場所に。この別の場所がどこであったかは起きて煙草をふかしたら忘れてしまったが、Fに会った気がしている。

何かを胃に含むというのは儀式的なことで、血なり肉なりになりうる可能性のあるものーある種の類いは身体は受け付けず、排出されていく仕組みらしいがそれを認識すること、或いは選択することはできないらしいがー好ましいことを取り込むことと、必要であるが為に得ていくことは考える余地もないのであって、つまりこれはえらく無防備に蓄えられていく訳である。#キッチン

遡ると、1月19日にも蝸牛の夢をみている。先日みた夢は平たい板のようなものを、随分と感傷的に胸に抱え込んだら二匹の蝸牛がいつのまにか裸となっているわたしの胸に押しつぶされて殻ごと張り付いていたのであった。張り付く、なんてものではなくめり込んでしまっているその殻の破片のひとつひとつを力を入れて引き剥がす。ちょうど指や何かに固まった石膏を剥くのと同じような感覚である。一匹分の殻を引き剥がしたところで、誰かと日常的な会話をした。今日は天気がわるいですね、とか、近頃の天候は夢でも反映されるのだろうか。

この魚の姿はまだ蛹で、雄と雌が交配をすると蝶になる。いずれも動物の雄というのは美しく装飾だてられている生き物らしくこの子も例外ではない。赤い鰭をふわりふわりと水に揺らせば、わたしも、あるいは同種の雌も途端に虜になる。偶然地味な姿の雌と接触できる機会があり、お見合いの後に同じ円形の水槽にと住まわせることになった。わたしの水槽には水以外何もない。二人が打ち解けるのは時間の問題でついに夫婦の交配が済んだ。雌に入れ込んだか、あの赤く美しい鰭は茶色と紫の蝶の羽根へと変わってしまった。どちらが雄か雌か、さっぱり分からないほど似ている。水の中を飛び回る姿は魚の面影もあるが、姿形はすっかり蝶へと変化した。すぐに二人の子供が産まれる。青くたくましい魚の子供はおそらく雄であろう。調べによると、この種類は雄同士の争いがひどいらしく、たちまちこの狭い金魚鉢の中では蝶と青い魚の死闘が繰り広げられることとなった。言うまでもなく、弱いのは蝶の方である。腹を出して浮かぶ蝶を救い上げ、よもや一日で死んでしまったこれをどうしようかと悩んだ挙げ句、標本にすることに決めた。腹にピンを刺し、触覚を整え、テープで羽根を固定する。以前飼っていたオオゴマダラを思い出し、羽根を上へとあげる作業の時にはもう涙で溢れていた。気付くと木板の上にはあの赤い鰭の美しい姿がある。鰭が羽根のように広がり、手元に届いた当初の三倍の大きさへとなっていた。目は魚独特の黄色で、動くことはない。全身に鳥肌が立ち「まだ生きてたんだ」と青ざめながらピンを抜いた。この時なぜわたしは彼が生きていたと確信したのかは夢なので分からないが、生物を飼育する上での恐怖が潜在的に残っていたのだろうと思う。そして現在もデスクの横で泳ぎ回っている彼の名前はローズマリーとなった。リリーとローズ、喧嘩しそうな名前で気に入っている。

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